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2018.06.28
CIC分析:鉱物試料への適用(2017/06/22-24、大阪大学にて)
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ハロゲン・硫黄自動燃焼分析システムの高速化及び
多元素分析への応用(その4):鉱物試料への適用

㈱ナックテクノサービス

長嶋 潜

1.はじめに

近年、有害物質の環境への拡散規制を強化する動きが国際的に広まっている。代表的な環境規制としてEUにおけるRoHS/WEEE指令やREACHなどがあり、有害物質を製品や材料で規制するというものである。このような規制強化に対応するため様々な製品や材料に含有するハロゲン(F,Cl,Br,I)・硫黄分析する必要性がますます高まっている。しかしながら、製品や材料に含有するハロゲン・硫黄は有機試料だけではなく、従来法では難しかった無機試料に由来するものも多い。弊社では、高温で燃焼(1,400℃)させることにより無機試料にも適用可能とした有機・無機試料兼用型のハロゲン及び硫黄の分析システムを開発した1)。先に本高温燃焼システムを用いて、セメント及び鉄鋼スラグ中のフッ素の分析法を検討したが、最近では特に硫黄分析への需要が増している。鉱物試料中の硫黄分析に適用した際に、燃焼温度の変化と分解促進剤の添加・無添加による検討を行い、いくつかの知見を得たので報告する。

2.実験

Table1

分析システムはヤナコ機器開発研究所製の燃焼炉((SQ-10)、吸収ユニット(HSU-35)、オートサンプラー(THA-24)及びイオンクロマトグラフからなる自動分析システムを用いた。磁性ボートにはかり取った試料はセラミック製燃焼管に導入し、2段階挿入法(Fig.1)により移動炉で燃焼を行った後、続いて固定炉で熱分解が行われる。燃焼によるハロゲン・亜硫酸ガスは吸収液によって捕集され、Table1の条件により分析する。

Fig.1

Fig.1 2段階挿入法による燃焼システム

3.実験結果及び考察

本システムの固定炉温度を950~1,350℃の範囲で順次上昇させ、各種試料中の硫黄の定量を行い、熱加水分解挙動を調べた。加えて同様の温度条件で試料に分解促進剤(WO3)を添加し、その効果を調べた。

3-1. 難分解性無機試薬の分析

市販されている無機試薬のうち難分解性のCaSO4、BaSO4を選び、熱分解挙動を調べた。
結果をFig.2に示す。いずれもWO3添加、1,100℃以上ではほぼ100%の回収率が得られ、CaSO4では無添加でも1,200℃付近より定量的な回収率を示している。しかし、BaSO4の無添加では広い温度範囲で回収率10%台に止まっている。

3-2. 認証試料の分析

EU 認証試料のうちBCR-681の分析を行った。本試料はポリエチレン基材に多種重金属と微量のCl, Br, SO4を含み装置及び燃焼条件評価の指標として用いられる。結果はTable 2に示すように、いずれも表示値に一致した。特にBrは抱水ヒドラジン添加吸収液により効果が認められた(Br2 → Br)。

Fig.2

Fig. 2 難分解性硫酸塩の熱加水分解挙動
試料: 1mg、 (-▲-):WO3添加(50mg)、(-■-):無添加

Table2

Table 2 BCR-681の分析結果

Fig.3

Fig. 3 粘土材料のSOx発生温度と発生量


3-3. 実試料の測定

セラミック用粘土材料のSOx発生温度と発生量を測定した(Fig.3)。WO3添加・1250℃における全S含量は6.58%を示すことから、1200℃以上ではほぼ定量的に放出している。
また、本試料には多量の鉄を含むことから、酸化鉄がWO3と同様の分解作用を促している。

4.まとめ

熱加水分解挙動から、CaSO4のように高温燃焼のみで充分な定量結果が得られるものがある一方で、BaSO4のように高温燃焼だけでは定量が困難な場合があることがわかった。また、分解促進剤の添加は非常に効果的であり、分解促進剤の添加と高温燃焼を組み合わせることで、回収率を大幅に向上できることがわかった。

文 献

長嶋 潜、出羽 好 : 特許 第5399795号 (2013).

Speed-up of halogens and sulfur auto- combustion analytical system and application to multi-elemental analysis (4) : Analysis of mineral samples

○ Hisomu Nagashima (NAC techno Service Co., Ltd.)

Abstract
A multifunction halogens and sulfur analytical system has been developed by coupled combustion/ion chromatography (IC). The system is composed by combustion furnace, absorption unit , automatic sampler and ion chromatograph. In this study, we have established a simultaneous determination for inorganic halogens(F,Cl,Br,I) and sulfur(S), based on conductivity detection after decomposition in this automatic system using clean air. The method can be applied to the determination of mineral samples that mainly composed of the analysis of sulfur.